性転換子の生き様

性転換で男→女に変わった私の人生の歩みや日々のLGBT関係の話で思ったことを書いてます。トランスジェンダーの話がメインです。

SEX CHANGE

性同一性障害の生活覗いていきませんか?

大学生編・・・レインコートの中は裸Ⅱ 性同一性障害㊱

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大学生編・・・レインコートの中は裸Ⅰ 性同一性障害㉟ - 性転換子の生き様

お金を稼ぐためにニューハーフパブの世界を覗きにいった私。

 控室で待っていると、オーナーが

「そろそろ始まるからこっち来て」

と客席の一番後ろの席に座らされた。

 

他の席には何人か男性がいる。どれも一人客だった。

周りにニューハーフが数人で囲んで場を盛り上げていた。

私の側にいたオーナーが

「あの人は〇〇(誰もが知ってる有名な日用品小売のチェーン店)の

会長の息子さん。あの人結構くるの。」

あの人はね~であの人は~なの。ってお客の情報を教えてくれる。

少し経つと客の周りにいたニューハーフが一斉に立った。

みんなが前方の幕の後ろの方へいく。お客さんと私はみんな一人ぼっち。

いきなりステージが照らされて音楽が鳴り、幕が開けた。

ショーの始まりだった。みんな綺麗に着飾ってポーズをとっての登場。

設備も結構お金がかかってそうな感じだった。

歌を歌う人や踊りを踊る人。ニューハーフが1人ずつワンマンショーを繰り広げる。

全員が各々のステージを終えると、今度は全員でのパフォーマンスが始まった。

今でも印象に残ってる。全員が真っ黄色のレインコートを着て真っ黄色の傘を持って踊りだした。ただしただの踊りじゃない。レインコートの中は裸。

レインコートの長さは下半身がぎりぎり隠れるくらいの長さ。踊ると下半身がちらちら見える。中には下着を履いていた人もいたんだけど、裸の人がほとんどだった。

でも見えた下半身には男性の特有のあれはついていなかった。

踊りで足をあげる。自分からレインコートの端をもって持ち上げる。

色んな動作で下半身を見せる。

そんな彼女達を見て、自分の顔を彼女達の顔と置き換えてみた。

 

ニコニコ笑いながらそういうダンスが出来るだろうか。

私は高校で見せ物になったことがある。他のクラスからわざわざ私を見に来る人たち。

大学でもそういう目にあったことがある。どれも嫌な思い出だった。

一時期視線がとても怖くなって、人の笑い声がとても怖くなって外に出れなくなったこともあった。そして今、自分から見せ物になろうとしている。

私はテレビに出てるニューハーフの人達が好きじゃない。あの人達が世間で笑いの対象になればなるほど、私達みたいな性同一性障害も笑いものにしていいって思う人が増えると思うから。

だからそんな生き方しなくていいように頑張って大学に入ったのに。

こっちの道に進むしかなかったのだろうか。

 

ショーも終わり、ニューハーフの人達がお客の元へ戻る。オーナーが私のもとへ来た。

「ショーどうだった?」「すごかったです」「どう?働けそう?」「少し考えて返事をしてもいいですか?」「いいよ」

そんなやり取りをしてそろそろ帰ろうとした時、お店で一番綺麗な女性が話しかけてきた。

「ホルマリーちゃんは性同一性障害なんだよね?それならここには来ない方がいいと思う。私達は性転換してる人多いけど性同一性障害じゃないの。ニューハーフなの。男の自分が好きで男の人に愛してもらいたいの。でも体は女の体で愛してもらいたいからニューハーフなの。ある意味ゲイみたいなものだから。

だからホルマリーちゃんみたいに自分の心が女なんて思ったことないよ。そんなホルマリーちゃんがここで働いたら絶対に傷つくと思う。だってここのお客さんは男に会いに来てるんだからね。」

すごく衝撃的だった。性転換までしてるから心が女性なんだと思ってた。ニューハーフって男として男に愛されたいけど体は女がいいっていう人の事だったらしい。知らなかった。そして、同時に少し悲しくもなった。心と体の性の不一致に悩んでる私達みたいなのがいて。この人達は体まで変えてるのに心は男だって言いきってたら世の中の人は混乱するだろうなって。そしたら私たちの理解がなかなか進まないだろうなっと。

 

帰りの電車で彼女の言葉は重くのしかかった。自分の部屋に戻り真っ暗な部屋の中で天井を見つめながら色々考えた。私はあの言葉を聞いてもあそこで働くしかない理由がある。裸で踊れるだろうか。男として扱われることに耐えられるだろうか。

その日久しぶりに声を上げて泣いたと思う。いつも泣くときは声を殺して泣いてた私が久しぶりに声を出して泣いた。多分そうでもしないと自分を保ってられなかったんだと思う。

 

数日後にオーナーには断りの電話を入れた。